中国語の発音を学ぶ際によく聞く言葉に“四声”があります。
“四声”とは「四つの声調」という意味ですが、「一」と「不」については後に続く文字の声調に応じて、本来の声調が変化します。
また、第三声が連続する場合も注意が必要です。
ここでは、このような中国語の声調変化について解説します。
まずは四声の基本を押さえよう
中国語には4つの声調があります。声調とは一音節の中にある音程(声の高さ)の高低ならびに上昇・下降のことです。
声調が言葉の意味を区別する上で重要な役割を担っている言語を声調言語と呼びますが、これは主にアジアの言語に見られる特徴です。
例えば上海語やタイ語には5種類の声調が、広東語やベトナム語には6種類の声調があります。
日本語は一音節の中で音程が変わることはないので声調言語ではありませんが、例えば「箸」と「橋」、「傘」と「嵩」のように発音は同じでも音程の上昇・下降によって全く意味の異なる単語の組み合わせがいくつかあります。 何はともあれ、中国語の四声は、以下の通りです。
声調の種類
①第1声……高いまま保つ音で、記号“̄”で表します。
②第2声……低く始めて一気に上昇させる音で、記号“́”で表します。
③第3声……低いまま保つ音で、記号“̌”で表します。
④第4声……高く始めて一気に下降させる音で、記号“̀”で表します。
これに加えて、本来の声調が持つ音の高低や上昇・下降とは無関係な「軽声」があります。
中国語では一つの漢字の音の長さはどれも同じですが、軽声になるときだけ、軽く短く発音します。
第3声を表す記号“̌”は、低く抑えた後で上昇させるかのような印象を与えますが、実際にはそうではありませんので、注意してください。
「一」の声調の変化
「一」の声調は、本来は第1声”yī”です。
ところが第1声、第2声、あるいは第3声が後に続く場合は、第4声”yì”に変化します。
ここで、「一」は辞書では元の声調で記されますが、中国語の教材などでは変化した後の声調で記されることが多いので、注意が必要です。
- 「一」+第1声の例
1. 一千(yìqiān) … 1000
2. 一杯(yìbēi) … 1杯
- 「一」+第2声の例
1. 一直(yìzhí) … ずっと
2. 一年(yìnián) … 1年
- 「一」+第3声の例
1. 一起(yìqǐ) … 一緒に
2. 一碗(yìwǎn) … 1碗
3. 一本(yìběn) … 1冊
また、第4声が後に続く場合は、第2声”yí”に変化します。
- 「一」+第4声の例
1. 一次(yícì) … 1回
2. 一刻(yíkè) … 15分
ただし、「一」が順番を表す序数の場合は変化しません。つまり、本来の第1声”yī”のままです。
- 例
1. 一号(yīhào) … 1番、1号、1日
2. 一月(yīyuè) … 1月
3. 第一次(dìyīcì) … 第1回、1回目
「不」の声調の変化
「不」の声調は、本来は第4声”bù”です。
第1声、第2声、あるいは第3声が後に続く場合は、変化しません。つまり、本来の第4声”bù”のままです。
ここで、「不」は辞書では元の声調で記されますが、中国語の教材などでは変化した後の声調で記されることが多いので、注意が必要です。
- 「不」+第1声の例
1. 不吃(bùchī) … 食べない
2. 不喝(bùhē) … 飲まない
- 「不」+第2声の例
1. 不行(bùxíng) … ダメだ
2. 不合(bùhé) … 合わない
- 「不」+第3声の例
1. 不好(bùhǎo) … 悪い
2. 不买(bùmǎi) … 買わない
また、第4声が後に続く場合は、第2声”bú”に変化します。つまり、第4声が連続する(下降調が続く)ことがないという点は「一」と同じですね。
- 「不」+第4声の例
1. 不对(búduì) … 違う
2. 不是(búshì) … ~ではない
3. 不去(búqù) … 行かない
4. 不错(búcuò) … 良い
第3声が連続するときの声調の変化
第3声が連続する場合、最初の第3声は第2声に変化します。
つまり、第3声+第3声→第2声+第3声となります。
ただし、第2声に変化しても、声調記号は第3声のままなので、読むときに注意しましょう。
- 例
1. 洗澡(xǐzǎo) … 入浴する
2. 手表(shǒubiǎo) … 腕時計
3. 打扫(dǎsǎo) … 掃除をする
4. 管理(guǎnlǐ) … 管理する
5. 水果(shuǐguǒ) … 果物
第3声に軽声が続く場合
直前の音節が第1声、第2声、第4声の場合、軽声はその音節よりも低く発音します。
これに対し、直前の音節が第3声の場合は、その音節よりも高く発音します。
- 例
1. 姐姐(jiějie) … お姉さん
2. 喜欢(xǐhuan) … 好きである
3. 早上(zǎoshang) … 朝
4. 眼睛(yǎnjing) … 目
5. 点心(diǎnxin) … お菓子
声調の変化をマスターするために
以上紹介した声調の変化をマスターするには、知識として知っているだけでは不十分なのは言うまでもありません。
「体感語学の中村屋」が提唱する音読法によって、中国語の文章を音読して体に染み込ませることをお勧めします。
また、単語を音読する段階を踏む以前に、中国語の音声を大量に聴いて、そのイメージを聴覚記憶として持っておくことも大切です。
最後にこの記事で紹介した声調の変化をマスターするのに役立つ本を紹介します。
日本人のための中国語発音完全教本/著者:盧尤
約220分に及ぶ3枚の音声CDが付属しており、メトロノームに乗ってリズムを感じながら発音練習できるという、他に類を見ない良書です。
「体感語学の中村屋」の考え方にも相通じる「発音と聞き取りは車の両輪」という理念の下、聞き取りの練習問題も豊富に設けられており、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。